長らくポスト中国はインドといわれていますが未だにインド株には直接、投資できない状況が続いています。
どうしてもインド株個別銘柄に投資したいという場合は、アメリカ市場に上場しているADR(預託証券)のインド銘柄を購入するしか手段はありません。
ただ、現状ではADRで購入可能なインドの株は、銀行やソフト開発メーカー等、名前も馴染みがなく、今一つピンとこない銘柄しかありません。
投資信託という手段もありますが、新興国特有の株価の上下動や通貨リスクも高く、投資しにくいのが現状です。
そんなインド株志向の投資家に別の手段として検討されているのが、日本の代表的な自動車メーカーのスズキ株をインド株に見立てて購入することです。
広く知られているようにスズキは、インドの自動車市場において圧倒的なシェアを占めています。具体的には以下の通りです。
■インドの主要メーカーの新車販売台数 2019年12月(輸出台数を除く)
マルチ・スズキ 124,375
タタ 44,254
マヒンドラ 30,870
現代 37,953 42,093
トヨタ 6,544 11,836
スズキは、インドでは現地法人のマルチ・スズキとして、事業展開していますが、インド企業であるタタやマヒンドラを抑え、圧倒的なシェアを誇っています。
また、インドの車市場の大きさは2018年で日本に次いで4位となっています。
■自動車世界市場の2018年の国別シェア
中国 29.5%
アメリカ 18.6%
日本 5.5%
インド 4.6%
ドイツ 4.0%
インドの人口の大きさや若年層の多さ、それにのびしろのある経済状況を考えると
インドが自動車世界市場で近いうちにトップレベルになることは確実視されています。
車のような製品市場では、一度高シェアを占めると、簡単には落ちないとされていますので、現段階で圧倒的なシァエを築いているマルチ・スズキは、5年、10年単位で見た場合、有望ではないかと思います。
マルチ・スズキは、インド株式市場に上場していますが、インドは現在も外国人投資家によるインド企業への直接投資に制限を設けていますので、投資信託を通じてか、マルチ・スズキの株式の過半数を握るススキに投資するしか術はありません。
インドの車市場は、2018年後半くらいから、ノンバンクの信用不安による金融機関の貸し渋りや、自動車保険の加入義務付け期間延長で低迷していました。
そこへ、さらに2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大が追い討ちをかけた状況でインドにおける2020年3月の新車販売台数が前年同月に比べ61%減少とリーマンショック直後以来の低水準となっています。
東証に上場しているスズキの株価もインドでの販売不振を背景に2018年8月に7680円の高値をつけて以降、下落に転じていて、5月15日時点で3506円と半値以下の水準となっています。
ただ、インドの車市場は今が最悪とされていますので、今を底と考えれば、長期保有志向であればスズキ株の購入も面白いのではないかと考えています。