東京証券取引所を構成する東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックの各市場の違いと特長について、簡単にわかりやすく説明します。
まず、2020年5月における各市場の上場会社数は以下の通りです。
東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダック別上場会社数
・東証1部 2,171社
・東証2部 482社
・東証マザーズ 322社
・ジャスダック
スタンダード 666社
・ジャスダック
グロース 37社
※ジャスダック市場は、元々は日本証券業協会が管轄していた市場で、東京証券取引所とは無関係の市場でした。ジャスダックの企業の株式は、取引所ではなく、証券会社間の相対取引によって、株価が決まり、取引されていました。
その時点では、ジャスダック市場の企業は上場企業とはいわず、店頭公開企業とよばれていました。
2010年に東京証券取引所に吸収合併され、現在に至っています。
※東証マザーズは、東京証券取引所により、新興・ベンチャー企業向け市場として1999年に新設されました。
上記のように上場企業の約6割が東証1部上場で、それ以外の企業は東証2部、東証マザーズ、ジャスダック上場となっています。
東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダック別の主な上場基準は以下の通りです。
東証一部と東証2部、東証マザーズ、ジャスダックでは、特に時価総額で10倍以上の差があります。
その一方、ジャスダックと東証マザーズでは、上場基準に大きな差はありません。
東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダック別の主な上場基準
★東証1部 上場基準
・ 株主数2200人以上
・ 時価総額250億円以上
・ 3年以上継続的に事業継続していること
★東証2部 上場基準
・ 株主数800人以上
・ 時価総額20億円以上
・ 3年以上継続的に事業継続していること
★ジャスダック 上場基準
・ 株主数200人以上
・ 時価総額5億円以上
・ 1年以上継続的に事業継続していること
★東証マザーズ 上場基準
・ 株主数200人以上
・ 時価総額10億円以上
・ 1年以上継続的に事業継続していること
それでは、なぜ上記のように上場企業を市場別に分類しているかということについては
下記のような理由からです。
なぜ上場企業を市場ごとに分類しているのか、その理由について
・上場企業の規模で市場を分類するため
株式時価総額が約20兆円と日本で一番大きいトヨタ自動車は、東証1部上場です。
対して、東証マザーズ上場企業では、時価総額が100億に満たない企業も少なくありません。
このように同じ上場企業といっても、その規模は雲泥の差があります。
また、上場会社は約4000社もあるため、それを一つの市場で扱うには、企業数が多すぎるという問題もあります。
そのため、主として企業の規模によって、上場企業を東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックのいずれかの市場に分類しています。
従って、時価総額の観点からは、東証一部>東証二部>マザーズ JASDAQという関係が成り立っています。
もちろん、中には東証マザーズ上場企業のほうが東証二部の企業より時価総額が大きいというケースもありますが、全体としては、上記のような関係となっています。
・投資家保護の観点から上場企業を市場ごとに分類するため
東京証券取引所の重要な使命のひとつに投資家保護があります。
たとえば、トヨタ自動車のような企業であれば、どんな企業であるか説明しなくても理解できる人は大半です。
でも、上場企業といっても、社名を聞いても何をやっているのかわからない企業は少なくありません。
このような知名度の低い企業に投資しようと考えた人にとって、重要な判断材料になるのがその企業が東証一部、東証二部、マザーズ、 JASDAQの4市場のうち、どの市場に上場しているかということです。
つまり、上場企業の規模や時価総額等で分類し、市場を区分することで、投資家にリスクを認知してもらえるからです。
従って、投資リスクの観点からみると、一般にリスクが低い順に東証一部>東証二部>マザーズ、JASDAQということになります。
・新興・ベンチャー企業に上場の門戸を広げるため
かつては、企業が上場するためには、東証1部もしくは東証2部に上場するしかありませんでした。
それだと、設立して日が浅い新興・ベンチャー企業にはハードルが高すぎるということで、マザーズ、JASDAQが設けられ、現在に至っています。
東証マザーズとジャスダックの違いとは
東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックの4市場のうち、その区分・違いがわかりにくいのが東証マザーズとジャスダックです。
以下のように東証マザーズは、設立まもない新興企業向け市場という位置づけに対し、ジャスダックは、新興企業というより、中堅・中小企業向け市場となっています。
実際、ジャスダック市場には、設立して何十年も経っている企業は少なくありません。
一方、東証マザーズには設立5年未満という企業も上場しています。
しかし、ここ数年、現在の4市場の区分について、わかりにくい、実態にあっていないとの批判が特に機関投資家を中心に高まっていました。
これを受けて、東京証券取引所を運営する日本取引所グループは、現在の市場の区分の見直しの検討を進めてきましたが、2020年2月に現行の東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダック4市場を「プライム」、「スタンダード」、「グロース」(いずれも仮称)の3市場に集約する新制度案を公表しました。
東証が市場区分を見直し2022年に4市場が3市場に集約・再編成される予定
日本取引所グループによると、”現行の東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックは「プライム」、「スタンダード」、「グロース」(いずれも仮称)となり、既に上場している企業は適切と考える市場区分を主体的に選択できるようになる。”ということです。
新制度案によれば、最上位の位置づけとなるプライム市場は主に、機関投資家の投資対象となるにふさわしい企業で構成。
プライム市場の上場基準は、”「時価総額250億円以上かつ流通株式比率が35%以上」に加え、より市場における流動性を確保する観点で、新たに「流通時価総額」が100億円以上であることを求める。”となることが予定されています。
従って、現行の東証一部企業の全てがプライム市場に移行できるとは限らないことになります。
また、スタンダード市場は、現行の東証2部やジャスダックの一部の企業が、マザーズやジャスダックの一部の企業がグロース市場に集約・再編される計画。
日本取引所グループでは、2020年中に新制度案を確定させたあと、2022年4月から3市場に移行するとしています。
まとめ
①東証1部・東証2部・ジャスダック・マザーズの違いは、その上場基準にあり、株式時価総額では、東証1部が250億円以上、東証2部が時価総額20億円以上、ジャスダックが5億円以上、マザーズが10億円以上となっています。
②東証マザーズは、設立まもない新興企業向け市場という位置づけに対し、ジャスダックは、新興企業というより、中堅・中小企業向け市場となっています。
③日本取引所グループは、現行の東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックの4市場を「プライム」、「スタンダード」、「グロース」(いずれも仮称)の3市場に再編成・集約する制度改革を2022年に施行する計画です。